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糖尿病の克服には「腹やせ」を! (シリーズ「糖尿病」㉔)2016年9月23日(金)
糖尿病合併症、なかでも心筋梗塞や脳梗塞のような動脈硬化性疾患を発症すると、その後の人生、健康寿命にも大きな影響を及ぼしかねません。これらを防止するには血糖管理だけでは不十分で、同時に高血圧、脂質異常症などもしっかり管理しないといけません。
これら併発する代謝異常の一番の大元になると考えられるのが、内臓周囲に脂肪がたまった状態である「内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)」なのです。脂肪肝(脂肪性肝炎)もこの病態の一つです。内臓脂肪細胞が増えるとアディポサイトカインという悪玉ホルモンが多く分泌され、糖尿病、動脈硬化を発症、進展させやすい危険な状態になります。逆に内臓脂肪が減らせれば、すべてを一気に良くすることも可能です。
それには何が有効か。カロリー制限がうまく出来なくても、糖質(炭水化物)制限だけでもより速くやせられることが分かっています。極端な糖質制限はお勧めしませんが、緩やかな糖質制限なら良いと思います。主食を摂りすぎている方はご飯の量を減らす(半分にする)、絶対に大盛りにしない、糖質の間食は控えるといった心がけも有効です。運動も有効で、ウォーキングのような「軽い有酸素運動」に「軽い筋トレのレジスタンス運動」を加えられればより効果的です。
(注)糖質=炭水化物、と考えて下さい。2018.07.24
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「ゆるやかな糖質制限」のすすめ。 (シリーズ「糖尿病」㉕)2016年11月25日(金)
「糖質制限」がブームです。これまでの「カロリー制限」は、糖質(炭水化物)、蛋白質、脂質のバランスを保ちつつ全体のカロリーを抑えるものでしたが、 「糖質制限」は、糖質(炭水化物)のみを制限すればよいので実施が簡単で、糖質以外は比較的自由に食べて良いので空腹の辛さがなく悲壮感もありません。それでいて減量しやすく、糖尿病治療にも有効です。内臓脂肪減量(メタボ改善)には脂質制限よりも糖質制限が有効とされます。(注:蛋白制限が必要な腎臓病の方、脂質制限が必要な高脂血症の方では注意が必要。)
しかし、糖質を(一食20g以下、一日50g以下に)極端に制限すると、ケトン体が増えてきます。近年ケトン体の良い効果も言われていますが、糖尿病ケトアシドーシス等の報告も以前あり現時点で安全と言えません。そこで、我々糖尿病専門医は一食の糖質を20g以下にしない「緩やかな糖質制限」をお勧めしています。
実際のやりかたですが、一日の糖質摂取量を130g以下にする(日本人の一日糖質平均摂取量270gですので半分弱にする)。朝・昼・夕の各食の糖質を20〜40gに抑えれば、芋類以外のおかずは自由に食べられます。間食は糖質10gまでOKで、これで1日の糖質摂取量を70〜130gに抑えます。(当院では管理栄養士による指導も行っています。)2018.07.24
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糖尿病がもっとも悪化しやすい季節です。 (シリーズ「糖尿病」㉖)2017年1月27日(金)
この時期は糖尿病が悪化している方がとても多い。その原因として、年末年始はクリスマス、お正月といったイベントが多いことに加え忘年会、新年会もある、加えてこの寒さ、外出の機会も減り汗をかきにくい、運動不足になりやすいことが挙げられます。その結果、体重が増えている方も多い。
体重が増えると2型糖尿病は悪化しやすい、同時に血圧、中性脂肪なども高くなりやすい。体重が増えれば内臓脂肪は増え(メタボは悪化し)インスリンの働きは落ち血糖は上がる。また運動不足で汗をかかなければ代謝は悪化し、やはりインスリンの働きは悪くなります。内臓脂肪が増え中性脂肪が上がれば、HDL(善玉)コレステロールが下がるので動脈硬化にもなりやすくなります。
この時期の対処法としては、やはり食事に気をつけ体重を増やさないように注意する、「緩やかな糖質制限」を心がけ糖質(炭水化物)を摂りすぎないようにする。体重を増やしにくい野菜、海藻類、大豆製品などは積極的に摂るべきでしょう。気温が低い時期は汗をかきにくいので、ウォーキングなどの運動を心がけ気持ちの良いレベルで汗をかくようにすることも有用です。
体重が少しでも減れば、糖尿病とともに血圧も安定し脂質異常も改善します。気分が良くなれば、治療に対するモチベーションも上がることでしょう。2018.07.24
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血糖値スパイクのお話 (シリーズ「糖尿病」㉗)2017年3月24日(金)
「血糖値スパイク」という言葉を知っていますか。検診やドックで空腹時血糖やHbA1cは正常であるにもかかわらず、食後血糖が140mg/dl以上に一時的にスパイク状に上がってしまう場合を言います。食後だけ一時的に上がるのみで、空腹時血糖はほぼ正常ですので検診では引っかからないことが多いです。しかし、血糖値スパイクの値の増加、頻度の増加につれて様々な合併症が起きやすくなることが分かって来ました。具体的には心筋梗塞、脳梗塞や認知症、さらには癌のリスクも高めるとされます。
血糖値スパイクは、食後1時間程での血糖を測ることで見つけることが可能です。出来るだけ早期に見つけ、無かった状態に速やかに戻すべく努力することが大事です。まだ糖尿病ではなく、以下が有効とされます。①食べる順番;まず野菜→肉魚から手をつけ、ご飯(炭水化物)は最後に食べる。②朝食を抜かない;食事を抜くとインスリン分泌が落ちるので次の食事で血糖値スパイクが起きやすくなる。定期的に一日三食食べるのが望ましい。③食後はちょこちょこ動け!;食後すぐに動くことで血液が手足の筋肉に奪われ、胃腸の動きが落ち糖の吸収が落ちるので血糖が上がりにくい。出来れば食後すぐに散歩する。このような小まめな心がけだけでも血糖値スパイクの程度、頻度を減らすことが出来、それは必ず効果があります2018.07.24
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ウォーキングと軽い筋肉運動のすすめ ~ボケ予防、寝たきり予防のためにも~ (シリーズ「糖尿病」㉘)2017年5月26日(金)
糖尿病の改善、予防には、食事療法とともに運動療法が有効です。運動による消費カロリーは実はあまり多くありません。しかし定期的に運動を続けると代謝が良くなりインスリンの効きやすい体質に変わります。少し汗ばむ程度、二人で歩く場合は軽く会話ができる程度のスピードで1日30分、週に3日以上歩く(ウォーキング)のが良いとされます。
軽い筋トレ(レジスタンス運動)を組み合わせるとより効果的。骨格筋が増える事で体が運動モードに入り脂肪がより燃えやすくなります。椅子を使ったスクワット、階段の昇降、膝をついたままの腕立て伏せ、椅子から立ったり座ったりする運動でもよいです。米国糖尿病学会では今年「30分に1回は立って軽い活動をすべき」と勧告されました。じっと座っている時間が長い人ほど生命予後が悪くなるというデータもあります。糖尿病のウォーキングは「食後」にすべき。歩きはじめて5分で血糖が燃え始めますが20〜30分後からは脂肪がより燃えやすくなります。痩せるためには20分以上歩くべきですが、わずか5分間のコマ切れウォーキングでも血糖低下はみられます。理想の歩数は一日8000〜1万歩ですが、習慣の無い方はまず5分、10分のコマ切れウォーキングから始めてみても良いです。膝の悪い方は自転車、水中歩行という手も。
(注:体調の悪い方は医師に相談してから行って下さい。)
2018.07.24
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緩やかな糖質制限のやりかた (シリーズ「糖尿病」㉙)2017年7月28日(金)
最近は糖質(炭水化物)制限が流行りで実行されている方も多いことでしょう。メリットとしては、まず痩せやすい。糖質の多い食物だけを減らせば良いので簡単で実行しやすい。食後血糖が上がらなくなり動脈硬化の予防になる。内臓脂肪が減りメタボも解消、認知症やガンの予防にも良さそう。
欠点としては、長期間続けるのがつらくリバウンドしやすい。炭水化物好きな人にとっては尚更です。腸内フローラに悪い可能性。腸内善玉菌を増やす食事は少なからず糖質だったりします。極端な糖質制限は逆に体調を悪くする可能性があり、お勧めは一日の糖質摂取量を70〜130gに保つ「緩やかな糖質制限」です。糖質を極端に減らすと血液中のケトン体が増えますが糖尿病の方は重篤な病態につながる恐れも出てきます。
糖質制限すれば、蛋白質と脂質の摂取が増えることになります。腎臓病で蛋白質制限を指示されている方は主治医とご相談ください。脂質摂取が増えるとカロリーが多くなるので肥満の方は要注意。摂る油の種類を考え、青魚を始めとして、アマニ油、えごま油、ナッツ類に多く含まれるオメガ3系脂肪酸(EPA、DHA)で増やせば、脳や血管の炎症を抑えるという話もありオススメです。当院では管理栄養士による指導も予約で行っております。2018.07.24
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血糖は一刻も早く良くするべき。 ~糖は身体に記憶される? 遺産効果? (シリーズ「糖尿病」㉚)2017年9月22日(金)
例え糖尿病があっても合併症を出さないために、血糖値はどの程度まで下げることが必要なのでしょうか? 1990年代に米国、英国、日本で行われた大規模調査研究の結果では、HbA1cを7%未満に維持すると、6~10年後合併症は大幅に抑えられることが分かりました。ただし、これは網膜症、腎症、神経障害の3大合併症の場合であり、動脈硬化については明らかとなりませんでした。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、現在日本人の死因の第2位が心臓病死です。
ところが、この調査研究をさらに10年以上追跡してみると、当初の段階でHbA1cが7%以下に維持できた人たちはより悪かった人たちに比べ、その後の血糖管理状況が同等であっても、心筋梗塞の発症や死亡率が有意に少ないことが分かったのです。つまり、糖尿病を発症した直後からの血糖管理をしっかり良くしておくことが、将来に亘って血管合併症を減らし、心筋梗塞や死亡率をも減らすことが示唆されたのです。このことはグライセミック・メモリー(血糖の記憶)、またはレガシー効果(遺産効果)などと言われます。
*HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー);血糖の約1カ月平均に相当する値。2018.07.24
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いい油を摂ろう。 ~オメガ3を増やしオメガ6を減らす~ (シリーズ「糖尿病」㉛)2017年11月24日(金)
皆さんは油を摂ると血糖が上がると思っていますか?答えは否です。食後すぐに血糖を上げるのは糖質(炭水化物)だけです。とは言え、油は時間をかけて肝臓で糖にも変えられますが、それは食後8〜10時間後ですので忘れた頃血糖が上がります。また、油はカロリーが多い(ブドウ糖1g=4kcalに対して油1g=9kcal)ので、摂りすぎると太ります。
一方、油は体を構成する基本物質であり体内では合成できない油(必須脂肪酸)もありこれは食事から摂らねばなりません。とは言え、現代生活ではオメガ6系不飽和脂肪酸摂取が多くなりがちでオメガ3の摂取が少なく、その結果、動脈硬化や炎症、がん等が増えやすくなるとされますので、積極的にオメガ3摂取量を増やし、両者のバランスを改善する必要があります。オメガ3の代表は青魚(鯖、鯵、鰯など)に多く含まれるEPA(DHA)で、鰯を大量に食べるエスキモーに心筋梗塞が少ないことは昔から知られていました。またアマニ油、エゴマ油、クルミ、アーモンド等も勧められます。またマーガリン、ショートニングに多く含まれるトランス脂肪酸(合成油)は心臓病のリスクを高めるとされますので、控えた方が良いでしょう。
2018.07.24
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コレステロール値はどこまで下げるべき? ~悪玉と”超”悪玉~ (シリーズ「糖尿病」㉜)2018年1月26日(金)
糖尿病合併症には心筋梗塞、脳梗塞のような動脈硬化性疾患も多く、生命に関わることも有り予防が重要です。血糖だけでなく血圧、脂質の管理、禁煙が求められます。
では、コレステロール値はどこまで下げるべきでしょうか?動脈硬化予防には、まず悪玉とされるLDLコレステロール(LDL-C)は120mg/dl以下にすべきとされます。しかし、それでも心筋梗塞になる方は少なくなく他のリスクも想定され、これを総コレステロール値から善玉であるHDLコレステロールを引いた値、non-HDLコレステロール(non-HDL-C)で代用することも多いです。LDL-Cよりさらに悪玉とも考えられる事から超悪玉とも呼ばれます。昨年出た予防ガイドラインではnon-HDL-Cを150以下に維持すべきと明記されました。
ではどうすれば下がるか。食事や生活習慣はもちろん大事ですが、コレステロールは食事の影響は1割程度しかなく、残りの9割は肝臓で合成され体質の部分も大きいので、スタチン系という合成を抑える薬が最も有効です。この薬はまた、血管の炎症を抑える作用もあり動脈硬化の発症進展そのものも抑え一石二鳥です。対して中性脂肪は食事による影響が大きく1日の中でも大きく変動しますので、食事管理(による減量)が最も有効です。
2018.07.24
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体重が増えにくくなる薬? 〜SGLT2阻害薬〜 (シリーズ「糖尿病」㉝)2018年3月23日(金)
2型糖尿病は肥満が問題です。内臓脂肪型肥満(メタボ)があると脂質異常症や高血圧も併発しやすく動脈硬化(心筋梗塞、脳梗塞)を起こしやすくなります。又脂肪肝も併発し、中にはNASHのような悪性の脂肪肝もあります。たとえ糖尿病が良くなってもこれらがあれば安心できません。痩せれば全て良くなるので痩せることが重要です。痩せるためには徹底したダイエットが必要ですが、実行、維持が難しいのも事実です。
SGLT2阻害薬は血液中の糖(血糖)を尿中に捨てる薬です。1日約70gの糖を強制的に尿に出すことで血糖を下げ太りにくくします。同時に尿量が増え脱水になりやすいので、のみ始めは水分を(1日500mL以上は)多めに摂る必要があります。平均3kgの体重減少が見込める薬とされますが、うまくいかない場合は余分に食べてしまっている可能性が高いです。体重が減って内臓脂肪が減れば全て良くなる、血圧も安定し、脂質・肝機能の異常も改善しやすくなります。
この薬でうまくいく方は多いのですが、中には体調不良になったり合わない方もいます。脱水以外にも低血糖、尿路(陰部)感染症など注意は必要です。減量がどうしてもうまくゆかない方は一度試してみる価値はあると思います。
2018.07.24
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