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熱中症予防の心得 (シリーズ「糖尿病」㉟)2018年7月27日(金)
例年にない猛暑が続いていますが、お変わりありませんでしょうか。今年は急に暑くなったため身体がまだ暑さに慣れていない、暑いだけでなく湿度も高いなど悪条件が重なっています。
熱中症予防のためには、暑さを避ける(我慢しない)、小まめな水分補給が大事とされます。 特に糖尿病患者さんの場合は、血糖値が高ければ尿量が多く脱水になりやすい、また合併症で自律神経障害があると発汗が減り体温が上昇しやすく熱中症になりやすい傾向があります。睡眠不足や疲れがたまっている、体調が悪い時なども要注意です。血糖コントロールを早く改善し、まめな水分補給を心がけることで、この時期を無事乗り切りたいものです。
スポーツドリンクは意外に糖が多いので要注意です。OS-1のような経口補水液の方が糖は少ないです。たくさん汗をかいた時には糖を含まない飲み物か水、お茶に塩少々(市販の経口補水液は塩分濃度が0.3%程度で糖も少々含みます)摂るのもよい(梅干しも可)でしょう。ただし高血圧や腎臓病等ある方は、塩分摂りすぎも駄目ですので主治医に確認を。
この時期の運動療法は無理をしないように。また、SGLT2阻害薬内服中の方も脱水になりやすいので注意が必要です。
2018.07.27
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糖尿病の長期管理指標 (シリーズ「糖尿病」④)2014年2月21日(金)
今年は珍しく大雪が二回もあり、雪かき等大変でしたが大丈夫でしたでしょうか。
さて、今回は「糖尿病」の長期管理指標について述べたいと思います。血糖値は時々刻々と変動し、食前、食後で値が上下するため、月一回の検査で月間比較するには不十分です。世界的に最もよく使われるのがHbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)です。これは、それまでの約1ヶ月の血糖平均に相当し、血糖コントロール状態を月ごとに比較するのに優れています。正常値が4.6?6.2%とされますが、合併症を出さないためにはHbA1cを7%未満に維持することが推奨されています。(注:2012年4月以前は、HbA1cはおよそ0.4%低い値で表示されています。)
まれですが、様々な要因によりHbA1cがその方の平均血糖を正確に示さない場合があります。他の長期管理指標(平均血糖)として、グリコアルブミン(約2週間の血糖平均に相当)、1,5アンヒドログルシトール(1,5AG、さらに短期間の血糖平均に相当)を使うこともあります。
春はすぐそこまで来ています。まだまだ寒い日もありますが、どうか体調管理に気をつけられ、冬を乗り越えられるよう頑張って参りましょう。
2018.07.24
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尿糖のお話 ~SGLT2って何?~ (シリーズ「糖尿病」⑤)2014年3月28日(金)
「糖尿病」は文字通り「尿に糖が出る」病気です。一般に血糖約170mg/dl以上(尿糖排泄閾値と言います)で尿に糖が出るようになります。正常の方では、腎臓で尿を作る際、糖が一度は尿中に出るものの、腎臓の近位尿細管にあるSGLT2(尿糖を血液中に戻す関門のようなもの)の働きにより殆どが血中に再吸収されるので尿糖は出ません。しかし、血糖が170mg/dlを超えると、SGLT2の働きの限界を超えるので尿糖が出てきます。尿糖を出すということは少しでも血糖を下げるための身体の反応とも考えられますが、尿糖の量が増えれば、それだけ身体のエネルギー源を失うことにもなります。即ちやせて健康状態も悪くなります。
尿糖排泄を増やすことにより血糖を下げる薬、「SGLT2阻害薬」が今年から使用可能になります。若い方や元気があり太られた方には有効な治療と思われます。反面、体力の落ちた方やお年寄りではさらに痩せて抵抗力が低下する可能性もあります。脱水(電解質異常)や尿路感染症にも注意が必要です。新薬でもあり、使用にあたっては慎重な観察が必要であると考えています。
2018.07.24
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運動療法について ~基本は平地歩行~ (シリーズ「糖尿病」⑥)2014年4月25日(金)
良い気候になって参りました。運動にはもってこいの季節ですね。
運動療法は、食事療法、薬物療法と併せ糖尿病治療の3本柱とされます。運動によるカロリー消費は思ったほど多くないので、食事療法も欠かせません。しかしながら、適度な「有酸素運動」を継続することにより、体内のインスリンの効きが良くなり血糖値が下がりやすい体質に変わっていきます。同時に脂質代謝、血圧も改善しやすくなり、体脂肪も減り(肥満が解消)、筋肉が増え(基礎代謝のアップ)、血液循環が良くなり心理的ストレスも解消しやすくなります。
運動のやり過ぎはかえって代謝を悪化させ血糖が上がることがあるので注意しましょう。目安としては最大酸素消費量の約50%強度、1分間の心拍数が138-年齢÷2を超えない程度にします。64歳の方でしたら一分間の脈拍が106を超えない程度です。酸素供給に見合った強度の運動である「有酸素運動」を継続することが代謝を改善します。平地歩行なら一回20~30分までを週3日以上(毎日出来ればなお良い)が目安になります。徐々に速歩で歩くようにしたり、一日2回出来ればなお良いでしょう。
血糖、血圧がまだ高すぎる方、進行した糖尿病合併症のある方、狭心症のある方など運動をしてはいけない場合もありますので、主治医とよく相談してからにしましょう。
2018.07.24
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「健康十訓」について (シリーズ「糖尿病」⑦)2014年5月30日(金)
世に「健康十訓」なるものが出回っております。江戸時代の横井也有が残した養生訓という話もありますが、真相は定かではありません。それはさておき、内容そのものは大変的を得ており素晴らしいものと思われますので、ここに紹介させていただきます。
少肉多菜(肉は控えめ野菜をたくさん、肥満を防止)
小塩多酢(塩分少なく酢を多く、高血圧予防)
少糖多果(甘いものは、砂糖より果実で楽しく)
少衣多浴(うす着、風呂好き、丈夫な身体)
少言多行(口つつしんで、よく身体を動かせ)
少食多噛(よく噛んで、腹八分目にする)
少欲多施(何事も欲ばらず、他人のために尽くせ)
少憂多眠(くよくよするより、よく眠りストレス解消)
少車多歩(車を使わず、「歩け歩け」は全身運動)
少憤多笑(腹を立てず、笑う門には福来たる)以上ですが、見れば見るほど納得でき奥が深い内容と思います。糖尿病を始め、高血圧、脂質異常症、メタボリックシンドロームなどの「生活習慣病」に有効な基本療法(食事療法と運動療法)そのものですね。さらにはエイジングケアにも有効でしょうし、抵抗力、免疫力を高め肺炎や癌の予防にもなる「病気にならない生活法」そのものと言えそうですね。
2018.07.24
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糖尿病の症状 ~どんな症状があったら、糖尿病を疑う?~ (シリーズ「糖尿病」⑧)2014年6月27日(金)
血糖値が高くなると、必要量以上に尿が出てしまい(多尿)、身体は脱水になってきます。その結果、喉が渇き(口渇)、水分を沢山摂る(多飲)ようになります。さらにインスリンの作用不足が進み高血糖が悪化すれば、体重減少、全身倦怠感をきたすようになります。さらなる高血糖(血糖500mg/dl以上)で脱水が高度になり、悪心、嘔吐、意識障害をきたす場合は早急な治療を要します。
この「口渇、多飲、多尿」は、糖尿病の典型的な症状とされますが、高血糖状態が長期間続くと、身体は慣れてくるため徐々に症状を感じなくなります。実は、この「無症状」が最も多い症状で、自覚がないため糖尿病が長期間放置される原因となっています。この場合、検査をしてみないと状態が分からないため注意が必要です。
糖尿病罹病期間が長期に亘ると、網膜症、腎症、神経障害など慢性合併症による症状が出現する可能性があります。視力障害、失明、眼圧上昇による眼痛、下肢・全身のむくみ、しびれ(糖尿病の場合は左右対称性であることが特徴)、感覚障害、自発痛、こむら返り、自律神経障害による症状(起立性低血圧による立ちくらみ、頑固な便秘、繰り返す下痢、胃もたれ感、勃起障害、尿閉等)などがこれにあたります。
2018.07.24
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何故、糖尿病になるのでしょうか? ~2型糖尿病になる素因と誘因~ (シリーズ「糖尿病」⑨)2014年7月25日(金)
「糖尿病」とは、慢性的に血糖が高くなる病気です。正常の血糖値は100mg/dl前後を中心として常に一定の範囲(およそ60?160mg/dl)に維持されています。血糖を下げる唯一のホルモンが「インスリン」ですが、このインスリンの「分泌が足りない」か「効きが悪い」と、血糖が上がり糖尿病を発症します。
ウイルス感染などが原因でインスリンが出なくなる「1型糖尿病」(全体の5%以下)と、遺伝・生活習慣が関与する「2型糖尿病」(約95%)に大きく分けられます。
2型糖尿病の発症には素因(遺伝)と誘因(環境因子)が必要で、元々糖尿病の遺伝を持った方に誘因が加わって初めて発症します。この誘因(環境因子)には、加齢、運動不足、過食、肥満(特に内臓脂肪肥満)、身体的ストレス(けが、病気、手術、妊娠)などがあります。例えば、歳をとるほど代謝の低下、筋肉量の低下、運動量の低下等により糖尿病になりやすくなるわけです。けが・病気をした時、手術前後などストレス下では、体内のストレスホルモンが増えるので血糖は上がっています。加齢以外の環境因子は、取り除くことが出来れば(病状、程度にもよりますが)糖尿病が治ることもあります。
2018.07.24
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糖尿病語呂合わせ ~色々な覚え方~ (シリーズ「糖尿病」⑩)2014年8月29日(金)
暑い日が続きますが、体調を崩されていませんか。今月は糖尿病に関する様々な事項の覚え方をまとめてみました。(船橋市立医療センター代謝内科部長の岩岡秀明先生のお知恵を拝借しております。)
①「血糖の正常値は?」
コンビニ名と同じです。「セブンイレブン、
70~110mg/dl」です。(注;朝食前の空腹時血糖値の場合)
②「糖尿病の三大合併症は?」
「しめじ」と覚えます。しは神経障害、めは網膜症、じは腎症。
③「糖尿病で大切な検査は?」
「A、B、C」です。A1c , Blood Pressure(血圧), Cholesterol(コレステロール)。
④「糖尿病の生活面で大切な5つは?」
「ABCDE」と覚えましょう。AはAlcohol(節酒、禁酒)、BはBody Weight(適切な体重)、
CはCigarette Smoking(禁煙)、DはDiet(バランスの良い食事)、EはExercise(適度な運動)。
⑤「カロリーが一番高い食べ物は?」
「3つの”あ”」と覚えます。油(1g=9kcal)、アルコール(1g=7kcal)、甘いもの
(ブドウ糖1g=4kcal)の順でカロリーが高いです。やせたい場合は参考にしましょう。
⑥「低血糖の症状は?」
「はひふへほ」と覚えましょう。は=腹が減り、ひ=冷や汗、ふ=ふるえ、へ=変な行動または
変なドキドキ、ほ=放置は昏睡。以上です。まだまだ暑い日が続きますが、無理をされず頑張って乗り越えたいものですね。
2018.07.24
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糖尿病があるおかげで、一病息災でいられます (シリーズ「糖尿病」⑪)2014年9月26日(金)
糖尿病治療の目標とは、血糖を良好にコントロールすることで、様々な糖尿病合併症を発症させない、進行させないようにすること。その結果、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)と寿命を確保することにあります。そのためには血糖だけでなく、血圧や脂質(コレステロール)、体重など総合的に管理する必要があります。
他の病気と違い、医者まかせではいけません。自分自身が主治医という自覚を持ち、病気に対する理解を深め自ら管理することが求められます。われわれ「糖尿病専門医」は、そのための助言をしたり良いと思われる薬を提案したりと最大限の協力を惜しみませんが、治療の主体はあくまでも患者さん自身になります。ここが他の病気との違いと言えましょう。
初めて糖尿病と言われた時、どうしてこんな病気にかかってしまったのかと気落ちしたり、不安になることもあるかと思います。しかし考えようによっては、糖尿病ほど「一病息災」という言葉がぴったり当てはまる病気もないと言えます。
「一病息災」とは、一つの病気があることにより何も病気がない人より食事や運動に注意して普段から健康に気をつける結果、最終的にはより健康で長生きできるというものです。糖尿病があることにより、定期的に通院され主体的に管理を続けることで他の成人病なども防止され、普通の方よりもかえって健康長寿を全うされる場合も少なからずあります。糖尿病を「一病息災」とすべく考え方を改めてみてはいかがでしょうか。
2018.07.24
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食事療法のポイント (シリーズ「糖尿病」⑫)2014年10月31日(金)
基本的に食べていけないものはないのですが、総カロリーを抑えることは必要です。やせることでインスリンの効きが良くなり、血糖のみならず血圧、中性脂肪も下がりやすくなります(メタボの改善)。その結果、動脈硬化を含めた糖尿病合併症を予防できます。
栄養のバランス(炭水化物、タンパク質、脂質)も大事です。炭水化物(糖質)は食後の血糖値が上昇しやすいため、近年極端な炭水化物制限を推奨するような情報が飛び交っています。確かに食後高血糖の抑制、減量には有効なのですが、低炭水化物食にすると高タンパク質、高脂肪食になることは避けられず、その結果動脈硬化、腎症を進行させる恐れがあります。主食(炭水化物)もある程度摂取する必要があります。
間食、外食、アルコール摂取時はカロリーが増加しやすいことが問題になります。カロリーの高い食事は、三つの”あ”と覚えましょう。あぶら(1g=9kcal)、アルコール(1g=7kcal)、甘いもの(ブドウ糖1g=4kcal)の三つです。これらに注意することでカロリーを減らすことが可能です。
食べ方、食べる順序の問題。よく噛んで(一口20回以上)食事にゆっくり時間をかけること、野菜から食べ始めること、満腹になるまで食べない(腹八分目ですませる)こと等もとても有効です。
糖尿病食は、誰にとっても健康長寿のための健康食と言えましょう。(当院では、管理栄養士による栄養相談を予約にて随時行っております。)
2018.07.24
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