シリーズ糖尿病

  • diabetes

    糖質制限すればやせられます!(その1)   ~カロリー制限から糖質制限に~ (シリーズ「糖尿病」㉑)2016年3月25日(金)

    「糖質制限」するだけで痩せられます。従来は痩せるためには「カロリー制限」で、肉も油も甘いものもバランスよく減らすよう言われました。
    それに対し、食事中の糖質だけ減らせば良いのが「糖質制限」です。「糖質」とは、炭水化物から食物繊維をひいたものです。食物繊維は悪さをしないので、糖質だけが悪者になります。蛋白や油もゆっくり血糖を上げますが、食後2、3時間以内に素早く血糖が上がるのは糖質だけです。食後血糖が上がればインスリンが出て脳や身体を動かすエネルギーになり、余った分は(内蔵)脂肪として蓄えられるので太ります。結局、肥満やメタボの主要な原因は糖質の過剰摂取ということになります。
    近年、米英の糖尿病学会でも糖質制限は減量や血糖管理に有効であり選択肢の一つとして認められました。我が国では専門学会の対応が遅れていて、非専門(医師、非医師)の方々の著作物がすでに氾濫している状況です。問題点は、糖質制限が極端な場合の安全性でしょう。また、腎臓病と妊婦の方にも糖質制限はすすめられません。
    我々一部の専門医が推奨するのは、糖質摂取量を1日70~130gとする「緩やかな糖質制限」です。イスラエルの大規模調査研究でも有効性、安全性が実証されています。当院では管理栄養士による指導も行います(予約制です)。

    2018.07.24

  • diabetes

    はたして糖尿病専門医は必要か? (シリーズ「糖尿病」㉒)2016年5月27日(金)

    近年、新しい糖尿病治療薬(DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬)が次々に登場、またメトフォルミンも以前の3倍量まで使えるようになり、専門医でなくても薬で血糖をある程度下げることが可能になりました。また週一回の薬(注射または内服)も登場し一定の効果があります。一方、「糖質(炭水化物)制限」がブームですが、これを行えば血糖は下がるし体重も減りやすい。だったら、糖尿病専門医でなくても良いのでは?という話も出てきます。
    糖尿病治療の目標は、「糖尿病症状の改善、また糖尿病合併症の発症、増悪を防ぎ、健康な人と同じ程度の健康の質と寿命を全うすることである」とされます。しかしながら、現状では糖尿病があれば、無い方より平均寿命、健康寿命ともに平均で10歳前後短くなる傾向があります。
    糖尿病管理は血糖だけ良くすればいいのではなく、併発する高血圧、脂質異常症、過体重(内臓脂肪肥満、いわゆるメタボ)、脂肪肝(NASHになると肝硬変、肝臓癌へと進行します)等全てを注意しながら改善していく必要があります。また低血糖が多いと認知症になりやすいとされます。網膜症、腎症、動脈硬化など糖尿病合併症の早期発見、糖尿病患者さんの死因で一番多いとされる癌への注意など、糖尿病という病気の特性を熟知して包括的に診療を行っているのが糖尿病専門医だと思います。

    2018.07.24

  • diabetes

    糖尿病の克服には「腹やせ」を! (シリーズ「糖尿病」㉔)2016年9月23日(金)

    糖尿病合併症、なかでも心筋梗塞や脳梗塞のような動脈硬化性疾患を発症すると、その後の人生、健康寿命にも大きな影響を及ぼしかねません。これらを防止するには血糖管理だけでは不十分で、同時に高血圧、脂質異常症などもしっかり管理しないといけません。
    これら併発する代謝異常の一番の大元になると考えられるのが、内臓周囲に脂肪がたまった状態である「内臓脂肪型肥満(メタボリックシンドローム)」なのです。脂肪肝(脂肪性肝炎)もこの病態の一つです。内臓脂肪細胞が増えるとアディポサイトカインという悪玉ホルモンが多く分泌され、糖尿病、動脈硬化を発症、進展させやすい危険な状態になります。逆に内臓脂肪が減らせれば、すべてを一気に良くすることも可能です。
    それには何が有効か。カロリー制限がうまく出来なくても、糖質(炭水化物)制限だけでもより速くやせられることが分かっています。極端な糖質制限はお勧めしませんが、緩やかな糖質制限なら良いと思います。主食を摂りすぎている方はご飯の量を減らす(半分にする)、絶対に大盛りにしない、糖質の間食は控えるといった心がけも有効です。運動も有効で、ウォーキングのような「軽い有酸素運動」に「軽い筋トレのレジスタンス運動」を加えられればより効果的です。
    (注)糖質=炭水化物、と考えて下さい。

    2018.07.24

  • diabetes

    「ゆるやかな糖質制限」のすすめ。 (シリーズ「糖尿病」㉕)2016年11月25日(金)

     「糖質制限」がブームです。これまでの「カロリー制限」は、糖質(炭水化物)、蛋白質、脂質のバランスを保ちつつ全体のカロリーを抑えるものでしたが、 「糖質制限」は、糖質(炭水化物)のみを制限すればよいので実施が簡単で、糖質以外は比較的自由に食べて良いので空腹の辛さがなく悲壮感もありません。それでいて減量しやすく、糖尿病治療にも有効です。内臓脂肪減量(メタボ改善)には脂質制限よりも糖質制限が有効とされます。(注:蛋白制限が必要な腎臓病の方、脂質制限が必要な高脂血症の方では注意が必要。)
    しかし、糖質を(一食20g以下、一日50g以下に)極端に制限すると、ケトン体が増えてきます。近年ケトン体の良い効果も言われていますが、糖尿病ケトアシドーシス等の報告も以前あり現時点で安全と言えません。そこで、我々糖尿病専門医は一食の糖質を20g以下にしない「緩やかな糖質制限」をお勧めしています。
    実際のやりかたですが、一日の糖質摂取量を130g以下にする(日本人の一日糖質平均摂取量270gですので半分弱にする)。朝・昼・夕の各食の糖質を20〜40gに抑えれば、芋類以外のおかずは自由に食べられます。間食は糖質10gまでOKで、これで1日の糖質摂取量を70〜130gに抑えます。(当院では管理栄養士による指導も行っています。)

    2018.07.24

  • diabetes

    糖尿病がもっとも悪化しやすい季節です。  (シリーズ「糖尿病」㉖)2017年1月27日(金)

    この時期は糖尿病が悪化している方がとても多い。その原因として、年末年始はクリスマス、お正月といったイベントが多いことに加え忘年会、新年会もある、加えてこの寒さ、外出の機会も減り汗をかきにくい、運動不足になりやすいことが挙げられます。その結果、体重が増えている方も多い。
    体重が増えると2型糖尿病は悪化しやすい、同時に血圧、中性脂肪なども高くなりやすい。体重が増えれば内臓脂肪は増え(メタボは悪化し)インスリンの働きは落ち血糖は上がる。また運動不足で汗をかかなければ代謝は悪化し、やはりインスリンの働きは悪くなります。内臓脂肪が増え中性脂肪が上がれば、HDL(善玉)コレステロールが下がるので動脈硬化にもなりやすくなります。
    この時期の対処法としては、やはり食事に気をつけ体重を増やさないように注意する、「緩やかな糖質制限」を心がけ糖質(炭水化物)を摂りすぎないようにする。体重を増やしにくい野菜、海藻類、大豆製品などは積極的に摂るべきでしょう。気温が低い時期は汗をかきにくいので、ウォーキングなどの運動を心がけ気持ちの良いレベルで汗をかくようにすることも有用です。
    体重が少しでも減れば、糖尿病とともに血圧も安定し脂質異常も改善します。気分が良くなれば、治療に対するモチベーションも上がることでしょう。

    2018.07.24

  • diabetes

    血糖値スパイクのお話 (シリーズ「糖尿病」㉗)2017年3月24日(金)

    「血糖値スパイク」という言葉を知っていますか。検診やドックで空腹時血糖やHbA1cは正常であるにもかかわらず、食後血糖が140mg/dl以上に一時的にスパイク状に上がってしまう場合を言います。食後だけ一時的に上がるのみで、空腹時血糖はほぼ正常ですので検診では引っかからないことが多いです。しかし、血糖値スパイクの値の増加、頻度の増加につれて様々な合併症が起きやすくなることが分かって来ました。具体的には心筋梗塞、脳梗塞や認知症、さらには癌のリスクも高めるとされます。
    血糖値スパイクは、食後1時間程での血糖を測ることで見つけることが可能です。出来るだけ早期に見つけ、無かった状態に速やかに戻すべく努力することが大事です。まだ糖尿病ではなく、以下が有効とされます。①食べる順番;まず野菜→肉魚から手をつけ、ご飯(炭水化物)は最後に食べる。②朝食を抜かない;食事を抜くとインスリン分泌が落ちるので次の食事で血糖値スパイクが起きやすくなる。定期的に一日三食食べるのが望ましい。③食後はちょこちょこ動け!;食後すぐに動くことで血液が手足の筋肉に奪われ、胃腸の動きが落ち糖の吸収が落ちるので血糖が上がりにくい。出来れば食後すぐに散歩する。このような小まめな心がけだけでも血糖値スパイクの程度、頻度を減らすことが出来、それは必ず効果があります

    2018.07.24

  • diabetes

    ウォーキングと軽い筋肉運動のすすめ   ~ボケ予防、寝たきり予防のためにも~ (シリーズ「糖尿病」㉘)2017年5月26日(金)

    糖尿病の改善、予防には、食事療法とともに運動療法が有効です。運動による消費カロリーは実はあまり多くありません。しかし定期的に運動を続けると代謝が良くなりインスリンの効きやすい体質に変わります。少し汗ばむ程度、二人で歩く場合は軽く会話ができる程度のスピードで1日30分、週に3日以上歩く(ウォーキング)のが良いとされます。
    軽い筋トレ(レジスタンス運動)を組み合わせるとより効果的。骨格筋が増える事で体が運動モードに入り脂肪がより燃えやすくなります。椅子を使ったスクワット、階段の昇降、膝をついたままの腕立て伏せ、椅子から立ったり座ったりする運動でもよいです。米国糖尿病学会では今年「30分に1回は立って軽い活動をすべき」と勧告されました。じっと座っている時間が長い人ほど生命予後が悪くなるというデータもあります。

    糖尿病のウォーキングは「食後」にすべき。歩きはじめて5分で血糖が燃え始めますが20〜30分後からは脂肪がより燃えやすくなります。痩せるためには20分以上歩くべきですが、わずか5分間のコマ切れウォーキングでも血糖低下はみられます。理想の歩数は一日8000〜1万歩ですが、習慣の無い方はまず5分、10分のコマ切れウォーキングから始めてみても良いです。膝の悪い方は自転車、水中歩行という手も。

    (注:体調の悪い方は医師に相談してから行って下さい。)

    2018.07.24

  • diabetes

    緩やかな糖質制限のやりかた (シリーズ「糖尿病」㉙)2017年7月28日(金)

    最近は糖質(炭水化物)制限が流行りで実行されている方も多いことでしょう。メリットとしては、まず痩せやすい。糖質の多い食物だけを減らせば良いので簡単で実行しやすい。食後血糖が上がらなくなり動脈硬化の予防になる。内臓脂肪が減りメタボも解消、認知症やガンの予防にも良さそう。
    欠点としては、長期間続けるのがつらくリバウンドしやすい。炭水化物好きな人にとっては尚更です。腸内フローラに悪い可能性。腸内善玉菌を増やす食事は少なからず糖質だったりします。極端な糖質制限は逆に体調を悪くする可能性があり、お勧めは一日の糖質摂取量を70〜130gに保つ「緩やかな糖質制限」です。糖質を極端に減らすと血液中のケトン体が増えますが糖尿病の方は重篤な病態につながる恐れも出てきます。
    糖質制限すれば、蛋白質と脂質の摂取が増えることになります。腎臓病で蛋白質制限を指示されている方は主治医とご相談ください。脂質摂取が増えるとカロリーが多くなるので肥満の方は要注意。摂る油の種類を考え、青魚を始めとして、アマニ油、えごま油、ナッツ類に多く含まれるオメガ3系脂肪酸(EPA、DHA)で増やせば、脳や血管の炎症を抑えるという話もありオススメです。当院では管理栄養士による指導も予約で行っております。

    2018.07.24

  • diabetes

    血糖は一刻も早く良くするべき。 ~糖は身体に記憶される? 遺産効果? (シリーズ「糖尿病」㉚)2017年9月22日(金)

    例え糖尿病があっても合併症を出さないために、血糖値はどの程度まで下げることが必要なのでしょうか? 1990年代に米国、英国、日本で行われた大規模調査研究の結果では、HbA1cを7%未満に維持すると、6~10年後合併症は大幅に抑えられることが分かりました。ただし、これは網膜症、腎症、神経障害の3大合併症の場合であり、動脈硬化については明らかとなりませんでした。動脈硬化は心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、現在日本人の死因の第2位が心臓病死です。
    ところが、この調査研究をさらに10年以上追跡してみると、当初の段階でHbA1cが7%以下に維持できた人たちはより悪かった人たちに比べ、その後の血糖管理状況が同等であっても、心筋梗塞の発症や死亡率が有意に少ないことが分かったのです。

    つまり、糖尿病を発症した直後からの血糖管理をしっかり良くしておくことが、将来に亘って血管合併症を減らし、心筋梗塞や死亡率をも減らすことが示唆されたのです。このことはグライセミック・メモリー(血糖の記憶)、またはレガシー効果(遺産効果)などと言われます。
    *HbA1c(ヘモグロビン・エー・ワン・シー);血糖の約1カ月平均に相当する値。

    2018.07.24

  • diabetes

    いい油を摂ろう。 ~オメガ3を増やしオメガ6を減らす~ (シリーズ「糖尿病」㉛)2017年11月24日(金)

    皆さんは油を摂ると血糖が上がると思っていますか?答えは否です。食後すぐに血糖を上げるのは糖質(炭水化物)だけです。とは言え、油は時間をかけて肝臓で糖にも変えられますが、それは食後8〜10時間後ですので忘れた頃血糖が上がります。また、油はカロリーが多い(ブドウ糖1g=4kcalに対して油1g=9kcal)ので、摂りすぎると太ります。

    一方、油は体を構成する基本物質であり体内では合成できない油(必須脂肪酸)もありこれは食事から摂らねばなりません。とは言え、現代生活ではオメガ6系不飽和脂肪酸摂取が多くなりがちでオメガ3の摂取が少なく、その結果、動脈硬化や炎症、がん等が増えやすくなるとされますので、積極的にオメガ3摂取量を増やし、両者のバランスを改善する必要があります。オメガ3の代表は青魚(鯖、鯵、鰯など)に多く含まれるEPA(DHA)で、鰯を大量に食べるエスキモーに心筋梗塞が少ないことは昔から知られていました。またアマニ油、エゴマ油、クルミ、アーモンド等も勧められます。またマーガリン、ショートニングに多く含まれるトランス脂肪酸(合成油)は心臓病のリスクを高めるとされますので、控えた方が良いでしょう。

    2018.07.24

ご予約・ご相談はお気軽に
 
ご来院される全ての患者さんが相談しやすい雰囲気づくりを心がけ、適切なアドバイスを行うよう努めております。

047-306-7570