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糖尿病があるおかげで、一病息災でいられます (シリーズ「糖尿病」⑪)2014年9月26日(金)
糖尿病治療の目標とは、血糖を良好にコントロールすることで、様々な糖尿病合併症を発症させない、進行させないようにすること。その結果、健康な人と変わらない日常生活の質(QOL)と寿命を確保することにあります。そのためには血糖だけでなく、血圧や脂質(コレステロール)、体重など総合的に管理する必要があります。
他の病気と違い、医者まかせではいけません。自分自身が主治医という自覚を持ち、病気に対する理解を深め自ら管理することが求められます。われわれ「糖尿病専門医」は、そのための助言をしたり良いと思われる薬を提案したりと最大限の協力を惜しみませんが、治療の主体はあくまでも患者さん自身になります。ここが他の病気との違いと言えましょう。
初めて糖尿病と言われた時、どうしてこんな病気にかかってしまったのかと気落ちしたり、不安になることもあるかと思います。しかし考えようによっては、糖尿病ほど「一病息災」という言葉がぴったり当てはまる病気もないと言えます。
「一病息災」とは、一つの病気があることにより何も病気がない人より食事や運動に注意して普段から健康に気をつける結果、最終的にはより健康で長生きできるというものです。糖尿病があることにより、定期的に通院され主体的に管理を続けることで他の成人病なども防止され、普通の方よりもかえって健康長寿を全うされる場合も少なからずあります。糖尿病を「一病息災」とすべく考え方を改めてみてはいかがでしょうか。
2018.07.24
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食事療法のポイント (シリーズ「糖尿病」⑫)2014年10月31日(金)
基本的に食べていけないものはないのですが、総カロリーを抑えることは必要です。やせることでインスリンの効きが良くなり、血糖のみならず血圧、中性脂肪も下がりやすくなります(メタボの改善)。その結果、動脈硬化を含めた糖尿病合併症を予防できます。
栄養のバランス(炭水化物、タンパク質、脂質)も大事です。炭水化物(糖質)は食後の血糖値が上昇しやすいため、近年極端な炭水化物制限を推奨するような情報が飛び交っています。確かに食後高血糖の抑制、減量には有効なのですが、低炭水化物食にすると高タンパク質、高脂肪食になることは避けられず、その結果動脈硬化、腎症を進行させる恐れがあります。主食(炭水化物)もある程度摂取する必要があります。
間食、外食、アルコール摂取時はカロリーが増加しやすいことが問題になります。カロリーの高い食事は、三つの”あ”と覚えましょう。あぶら(1g=9kcal)、アルコール(1g=7kcal)、甘いもの(ブドウ糖1g=4kcal)の三つです。これらに注意することでカロリーを減らすことが可能です。
食べ方、食べる順序の問題。よく噛んで(一口20回以上)食事にゆっくり時間をかけること、野菜から食べ始めること、満腹になるまで食べない(腹八分目ですませる)こと等もとても有効です。
糖尿病食は、誰にとっても健康長寿のための健康食と言えましょう。(当院では、管理栄養士による栄養相談を予約にて随時行っております。)
2018.07.24
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糖尿病のこわい合併症について (シリーズ「糖尿病」⑬)2014年11月28日(金)
糖尿病は血糖値が高くなる病気です。自覚症状がないことも多いので、つい放置してしまいがちですが、いずれは様々な合併症が起きてきます
まず有名な3大合併症(網膜症、腎症、神経障害)があります。糖尿病網膜症は成人後の主要な失明原因となりえます。糖尿病腎症が悪化すれば透析療法が必要となります(導入原因の第一位)。糖尿病神経障害の症状は全身に及び、手足のしびれや痛み、ひどい下痢や便秘などが出現し患者さんを悩ませることになります。
さらに糖尿病のある方は、心筋梗塞や脳梗塞などの「動脈硬化」を何倍も起こしやすいことが分かっています。また高血糖は免疫機能を低下させるので感染症にかかりやすくなります。傷が治りにくい、水虫、虫歯が悪化しやすい、かぜや膀胱炎、肺炎を起こしやすい(時に結核も!)等がみられます。足の血管に動脈硬化があれば歩行困難になったり、些細な傷でも悪化を契機に壊疽(組織が腐ってしますこと)になってしまうこともあります。
普段から血糖を出来る限り正常に近づける治療を続けることで、これら合併症を予防できる、進行を遅らせることが可能です。具体的にはHbA1c(約1ヶ月間の血糖平均を表す指標)を7.0%未満に維持することが必要です。ただし、動脈硬化は糖尿病軽症時でも進行しやすく、血圧、脂質異常症のコントロール、肥満の解消、禁煙を含めた総合的管理が必要になります。
2018.07.24
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糖尿病コントロールが悪化しやすい時期 (シリーズ「糖尿病」⑭)2015年1月30日(金)
新年あけましておめでとうございます。今の時期はどうしても糖尿病コントロールが悪化しやすい傾向があります。お正月後ということもありますし、年末年始は飲食の機会も多く、食生活も乱れがちです。加えて、この寒さ。外に出るのがおっくうになり、運動量も減りがちです。また、気温が下がるだけでも汗をかく機会が減り代謝も低下する傾向があり、インスリンの効きが悪くなり血糖が上がりやすくなります。国立衛生研究所の調査によると、年末年始は多くの方が体重を1kg以上増やすとのことです。
対策としては、会食やパーティには空腹の状態で行かないようにする。野菜サラダや低糖質の全粒粉パンなどを食べてから行くと食欲をコントロールしやすくなります。寒くても運動を減らさない。暖かい格好をする。また暖かい時間帯ならウォーキングもしやすいかもしれません。アルコールは色々と食事療法を乱しやすく、薬物治療中の方は低血糖の危険を高める恐れがあります。飲むなら上限を決めたいところです。「節度ある適度な飲酒」の上限とは、純アルコール換算で一日20g程度に相当し、これはビールなら中瓶1本(500mL)、日本酒なら1合(180mL)程度に相当します。
2018.07.24
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どんな食事がいいのだろう? (シリーズ「糖尿病」⑮)2015年3月27日(金)
糖尿病の食事療法では、まず総カロリーを減らすことを求められます。太りすぎている方の場合は痩せるだけで糖尿病が良くなる事が少なくないし、さらに血圧も下がり脂質代謝異常も改善しやすくなります。一方、痩せている方ではインスリン分泌が少ないことが多く、それ以上に痩せるメリットは無いとも言えますが、身体に入れるカロリーを抑えることで少なめのインスリン分泌でも追いつくようになり血糖値が改善します。
食後2、3時間以内に血糖が上がるのは炭水化物(糖質)だけですので、これだけ摂らなければ良いのだ、という情報が溢れています。確かに食後血糖は上がらなくなるので、見かけ上の糖尿病は改善します。しかし糖質を減らせば、その分脂質、タンパク質摂取が相対的に増えてきます。その結果、脂質代謝異常をきたしやすく、動脈硬化が心配になります。蛋白質の摂取過剰が腎臓に負担をかけてしまう場合もあります。ですので、糖質だけ摂らなければ後は何を食べても構わない、というような極端なやり方には大きなリスクが伴うことを自覚すべきです。
糖質を摂りすぎている人の糖質制限、痩せるための糖質制限は確かに有効でしょう。「極端な糖質制限」は避け、状況を見極めた上での「緩やかな糖質制限」なら比較的安全に良い結果を得られるのではないでしょうか。(つづく)
2018.07.24
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やせれば全て良くなる ~ウエイトコントロールの重要性~ (シリーズ「糖尿病」⑯)2015年5月26日(金)
2型糖尿病は肥満と関係があると言われています。日本では年々肥満が増え、糖尿病患者も昨年で950万人と増加傾向にあります。欧米人に比べ日本人はインスリン分泌能力が弱いため、軽度の肥満でも糖尿病を発症しやすいと言われます。軽度の肥満でも内臓脂肪は過剰に蓄積しやすいため、脂肪組織から分泌される生体調節因子(アディポサイトカインと言います)の産生・分泌異常を生じ、血糖上昇のみならず高血圧、脂質代謝異常の原因となりメタボリックシンドロームを発症させ、動脈硬化(心筋梗塞・脳梗塞など)の原因となります。肥満は他にも高尿酸血症、脂肪性肝炎(NASHなど)、睡眠時無呼吸症候群、肥満関連腎症、骨関節疾患、一部のがん(男性;大腸癌、前立腺癌、女性;乳癌、子宮癌)の原因にもなりえます。
減量することにより糖尿病が良くなるだけでなく、血圧、脂質異常も改善しやすいので、一石三鳥以上の効果があります。尿酸や脂肪肝(肝機能異常)も改善しやすくなります。しかし、歳をとると同じような食事・運動療法でもやせにくくなってきます。これは、加齢とともに代謝が落ちる、筋肉量が減ることに関係があります。それまで以上にカロリー制限、運動療法に励むことが求められます。
2018.07.24
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熱中症に注意! (シリーズ「糖尿病」⑰)2015年7月31日(金)
いよいよ梅雨も明け暑くなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。この時期、熱中症による救急搬送人数は毎年4万人以上に上ります。熱中症とは、高温、多湿、強い日射等の環境下で、体内の水分や塩分のバランスが崩れたり、体温の調節機構が働かなくなったりして発症する障害の総称です。
特に糖尿病の方は、尿量が多くなれば脱水を起こしやすく、自律神経障害が合併すれば発汗機能が低下し体温が上がりやすくなるので高リスクと言えます。ご高齢の方も脱水の自覚症状を感じにくくなっていることがあり注意が必要です。
炎天下だけでなく熱のこもった室内でも起こりえます。死に至る病であることを自覚して早めに対処しましょう。こまめに室内の温度管理をする、熱のこもる服装を避ける、暑さを「我慢しない」ことも大切です。まずは水分摂取が必要ですが、スポーツドリンクは糖が意外に多いので、水やお茶をお勧めします。でも摂りすぎた場合、低ナトリウム血症になることがあるので、塩分の補給も必要になります。少量の塩を摂る、経口補水液(OS-1など:スポーツドリンクと比べ塩分は2倍、糖は半分)を飲むという方法もあります。もちろんこの状態でビールなどは厳禁です。水分・塩分が摂れない場合、補給できても症状が改善しない場合は、速やかに救急外来を受診してください。2018.07.24
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2型糖尿病の薬〜メトフォルミンについて〜(シリーズ「糖尿病」⑱)2015年9月25日(金)
近年糖尿病治療薬は、とても多くの種類が使用可能となっています。血糖を下げ出来るだけ正常に近づけることで、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害といった三大合併症)が起きない(または進行しない)ことは明らかになっています。しかし、同じく重大な合併症である大血管症(心筋梗塞、脳梗塞のような動脈硬化)が抑えられるかどうかははっきりしていません。これには高血糖以外の脂質異常や高血圧、喫煙、肥満など多数の要因が関係するので、血糖だけの改善では不十分だからだと思います。
糖尿病の薬には体重を増やすもの、減らすもの、変わらないものがあります。血糖が下がっても体重が増えてしまうと、糖尿病以外の代謝異常が改善せず大血管症を予防できないので、体重が減る薬が最も望ましいと言えます。これまで体重が減る糖尿病治療薬はメトフォルミン(メトグルコ)だけでした。これを内服する事で死亡率や心筋梗塞が減少することが明らかにされています。他方、癌の発症進行を抑えるという報告もいくつもみられます。すでに欧米では2型糖尿病治療の第一選択薬となっていますが、我が国では薬価が大変安いことも魅力です。注意点としては、腎機能が悪い場合は乳酸アシドーシスという重篤な合併症をおこす危険があるので投与しないこと、75歳以上の高齢者には原則新規投与をしないこと、等があります。2018.07.24
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糖尿病性腎症に注意〜尿中アルブミン測定の意義〜(シリーズ「糖尿病」⑲)2015年11月27日(金)
糖尿病性腎症は糖尿病患者さんの3~4割に合併するとされますが、大半は自覚症状がありません。しかし、蛋白尿が出るようになり腎機能の低下が始まると短期間で透析へ至ることから早期発見が重要です。
典型的には、第1期(腎症前期)→2期(早期腎症期)→3期(顕性腎症期)→4期(腎不全期)→5期(透析療法期)と進むことが多いです。
正常である第1期から2期に入ったかどうかを調べる検査が尿中アルブミンの検査です。これが30(mg/g・Cr)を超えると異常と診断され(微量アルブミン尿といいます)腎症2期となります。さらに増加し300(mg/g・Cr)以上で3期へ移行し常時蛋白尿を認める状態となります。eGFR(血液中のCrやシスタチンCから計算)で示される腎機能が30未満に低下すれば4期となります。
尿中アルブミン量が増えると腎不全へ進行しやすくなるだけでなく、心血管疾患や死亡率が増えるとされます。一方、第2期では、血糖、血圧、脂質などをしっかり管理する事でアルブミン尿が減少し正常に戻る事も少なくなく(早期腎症の寛解)、同時に心血管疾患の発症リスクも下がるとされますので、この時期での包括的管理はとても重要になります。
第3期以降では寛解は難しくなり主に進行を止める治療になります。2018.07.24
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アンチエイジングの薬?ーメトフォルミンは寿命を延ばすか (シリーズ「糖尿病」⑳)2016年1月22日(金)
シリーズ第⑱回で「メトフォルミン(メトグルコ)」について述べました。この薬には糖尿病治療薬としての効果以外に、癌発症抑制効果の報告が数多くあり、さらなる調査が現在進行中です。
今回は、何とメトフォルミンの老化防止(アンチエイジング)薬としての効果を調べる臨床試験が米国で行われるらしい。基礎研究では、研究者がこの薬を回虫に投与したら加齢が遅れ寿命が延びた、マウスに投与したら寿命が40%延び、骨も丈夫になった。原因分析の結果、生物の細胞を頑丈にし寿命を延ばすとされる酵素を細胞内に増やす効果がメトフォルミンに確認されたとのことでした。
米食品医薬品局(FDA)が認可した臨床試験が今年から始まります。研究者たちは、メトフォルミン投薬により人間の老化を約20年遅らせることが可能と言い、「100歳の人は寿命が120歳まで延び、70歳の人は50歳の若さと健康を手に入れられる。アルツハイマー病の進行も止められる。」などと主張しています。正直本当かなという気もしますが、まずは結果を待ちたいと思います。
全ての癌が克服出来たとしても人間の平均寿命は3年延びる程度とのことですが、老化防止薬が現実のものとなれば人類に与える恩恵は計り知れないことは間違いありません。2018.07.24
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