2型糖尿病の薬〜メトフォルミンについて〜(シリーズ「糖尿病」⑱)2015年9月25日(金)
近年糖尿病治療薬は、とても多くの種類が使用可能となっています。血糖を下げ出来るだけ正常に近づけることで、細小血管症(網膜症、腎症、神経障害といった三大合併症)が起きない(または進行しない)ことは明らかになっています。しかし、同じく重大な合併症である大血管症(心筋梗塞、脳梗塞のような動脈硬化)が抑えられるかどうかははっきりしていません。これには高血糖以外の脂質異常や高血圧、喫煙、肥満など多数の要因が関係するので、血糖だけの改善では不十分だからだと思います。
糖尿病の薬には体重を増やすもの、減らすもの、変わらないものがあります。血糖が下がっても体重が増えてしまうと、糖尿病以外の代謝異常が改善せず大血管症を予防できないので、体重が減る薬が最も望ましいと言えます。これまで体重が減る糖尿病治療薬はメトフォルミン(メトグルコ)だけでした。これを内服する事で死亡率や心筋梗塞が減少することが明らかにされています。他方、癌の発症進行を抑えるという報告もいくつもみられます。すでに欧米では2型糖尿病治療の第一選択薬となっていますが、我が国では薬価が大変安いことも魅力です。注意点としては、腎機能が悪い場合は乳酸アシドーシスという重篤な合併症をおこす危険があるので投与しないこと、75歳以上の高齢者には原則新規投与をしないこと、等があります。