私たちは食事を摂ると、小腸からGLP−1とGIPという消化管ホルモン(インクレチン)が出ることが知られています。

 

特にGLP−1は、血糖が上がった時にインスリンを出させるだけでなくグルカゴン(という血糖を上げるホルモン)の分泌も抑える作用があります。また、胃から食べ物が排出される時間を遅くして血糖上昇を緩やかにし、脳に働きかけて食欲を抑える作用もあり、GLP−1分泌が多い人は痩せやすく少ない人は太りやすいとも言われています。

 

 インクレチンは食事をすると小腸から分泌されますが、DPP−4という酵素により非常に速く代謝されてしまい効果が長続きしません。

 

そこで、この酵素を阻害し効果を長引かせる薬(DPP−4阻害薬)が開発されました。DPP−4阻害薬は現在大変広く使われており血糖コントロールを改善しますが、痩せる効果まではありませんでした。

 

さらに、この酵素で分解されにくくGLP−1と同じ作用があるGLP−1受容体作動薬(GLP−1アナログ)が開発されました。これは注射薬でしたが、DPP−4阻害薬よりさらに強い血糖改善効果があり、その後週1回だけでよい注射薬も開発されました。

 

特に、近年出たセマグルチド(オゼンピックR)には明らかな減量効果、食欲抑制効果まで認められるようになりました。この薬(セマグルチド)は同時に内服薬(リベルサスR)も開発されたのですが、毎朝空腹時に30分間、この薬だけをのまないとうまく吸収されないので、使える方は多少限定されてしまいます。

 

 今後は、さらに強い血糖改善と減量効果がある週1回の注射薬(マンジャロR皮下注アテオス)の発売予定もあり、肥満がある2型糖尿病患者さんへのさらなる治療効果が期待されます。

 

わたなべ糖内科クリニック