はたして糖尿病専門医は必要か? (シリーズ「糖尿病」㉒)2016年5月27日(金)
近年、新しい糖尿病治療薬(DPP4阻害薬、SGLT2阻害薬)が次々に登場、またメトフォルミンも以前の3倍量まで使えるようになり、専門医でなくても薬で血糖をある程度下げることが可能になりました。また週一回の薬(注射または内服)も登場し一定の効果があります。一方、「糖質(炭水化物)制限」がブームですが、これを行えば血糖は下がるし体重も減りやすい。だったら、糖尿病専門医でなくても良いのでは?という話も出てきます。
糖尿病治療の目標は、「糖尿病症状の改善、また糖尿病合併症の発症、増悪を防ぎ、健康な人と同じ程度の健康の質と寿命を全うすることである」とされます。しかしながら、現状では糖尿病があれば、無い方より平均寿命、健康寿命ともに平均で10歳前後短くなる傾向があります。
糖尿病管理は血糖だけ良くすればいいのではなく、併発する高血圧、脂質異常症、過体重(内臓脂肪肥満、いわゆるメタボ)、脂肪肝(NASHになると肝硬変、肝臓癌へと進行します)等全てを注意しながら改善していく必要があります。また低血糖が多いと認知症になりやすいとされます。網膜症、腎症、動脈硬化など糖尿病合併症の早期発見、糖尿病患者さんの死因で一番多いとされる癌への注意など、糖尿病という病気の特性を熟知して包括的に診療を行っているのが糖尿病専門医だと思います。